Réalisation ॐ

永遠の相のもとに 〜 Sub specie aeternitatis 〜

ディズニーCEOが実践する10の原則

 ディズニーを復活させたロバート・アイガーの回想記です。ディズニーというブランドに強い思い入れはありませんでしたが、ピクサー買収にまつわるエピソードに感銘を受けていたので目を通してみました。

ディズニーCEOが実践する10の原則

ディズニーCEOが実践する10の原則

 

  前任者のアイズナーがスティーブ・ジョブズ犬猿の仲(似た者同士?)で険悪な関係が続いていましたが、そこから信頼関係を180°築き直して買収を成功させ、低迷していたディズニーアニメーションスタジオの再建をピクサー首脳陣に託すミラクル戦術で見事に復活させます。

常識的には「買った側」が「買われた側」のカルチャーを塗り替えるので、当初は「ピクサーの良さが失われる」ことを関係者は危惧しましたが、アイガーの構想はその常識を覆すものでした。

ピクサーと同様に「買収される側」の優位性を担保するアイガーの戦略は、マーベル、ルーカスフィルム21世紀フォックスなどを次々に傘下に収めて、ディズニー全体のブランド価値を大きく向上させました。

 

ビジネスの交渉事は「いかに相手の優位に立つか」「自部門の取り分を増やすか」といった価値観で争われがちですが、ディズニー側が(短期的には)譲歩して買収を成立させ、相乗効果によって「買った側」「買われた側」の双方を成長させることで、結果的にディズニーは大きな果実を手にしています。

これら大きなビジョンを実現させるまでの葛藤、相手に対する「敬意」が関係者の心を動かしていくエピソードは、それ自体が映画にでもなりそうなストーリーでした。期待した以上に良かったです!

 

過去のディズニーが官僚主義に陥って大きく低迷していたことを考えると、これは決して遠い世界の物語ではありません。パワーゲームで押し切るだけの収益確保は、いずれパワハラの告発などで終焉を迎えます。クリエイティブ産業「ならでは」の特殊な事例と捉えずに、あらゆるビジネスにおいて「創造的(クリエイティブ)な問題解決の方法」が追求されるべきだと思います。

 

※ディズニーによるピクサー買収に関しては、以下の2冊にもそれぞれの観点から綴られていますので、ご興味のある方は読み比べをお薦めします。

①コンピューターグラフィックス開発者でCEOのエド・キャットムルが書いた「ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法(原題:Creativity, inc)

ピクサー流 創造するちから

ピクサー流 創造するちから

 

②財務担当役員だったローレンス・レビーの「PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話(原題:To Pixar and Beyond)