Réalisation ॐ

永遠の相のもとに 〜 Sub specie aeternitatis 〜

Kul Kul Connection

 グリーンスクールを見学した後に、曜日毎にメニューが変わるオプションのツアーがあります。その日は、グリーンスクール周辺にある集落の子どもたちに放課後の施設を開放して、英語レッスンなどを提供する地域貢献の活動「クルクルコネクション」の紹介と、近所にある寺院で宗教儀式を体験するプログラムでした。
 https://www.greenschool.org/book-a-tour/#extendtours
 バリ島には、市街地でも郊外でも本当に多くの寺院が点在していて、屋敷や店舗に石像が置かれています。行く先々で供え物を入れた籠を運ぶ女性を頻繁に見掛けて、商店の従業員や近所の人が入り混じって礼拝しています。建物の入口や路地には供え物が欠かさず置かれ、生活に信仰が浸透している様子を目の当たりにしました。
 
 
 こんな世界観への関心が再訪したかった理由でもあったので、このプログラムを密かに楽しみにしていました。さっきの続きで欧米人グループについていくつもりでいたら、申し込んだのは自分ひとりだったようで・・・他の見学者が去っていく中、若いインドネシア女性ふたりと置き去りにされて質問攻め・・・いきなりの英会話になりました。やべえ。

 担当してくれたのはグリーンスクールの若い女性スタッフと、クルクルコネクションで英語を学んだ「卒業生」という近所の村の女の子でした。まずは大きな布を渡されて、現地の男性が身につける腰巻きと赤い帯で現地の民族衣装にコスプレ?するよう促されました。自分の胴回りでは布がかなり余るため、警備の男性スタッフも手伝いに呼ばれて(寄ってたかって)着付け。これが良いアイスブレイクになって、ふたりの女の子とはすぐに打ち解けました。

 街でよく見掛けるお供え物、まずはこの「チャナン」をキット仕立てでつくりました。ヤシの葉でつくった四角い箱は東西南北を表しているそうです。そこに置くバナナの葉でヒンドゥー教の3つの神、ブラフマー・ヴィシュヌ・シヴァを形作り、その上に異なる色の花びらを時計回りに置いていきます。最後に緑色の葉っぱを乗せて出来上がり。街で見るとお供えには色々な種類がありますが、それぞれに宗教的な意味合いがあるそうです。
 
 
 その後、グリーンスクールの門を出て徒歩で近くの寺院まで移動。歩きながらのお喋りで、彼女たちの口から「DORAEMON」とか「NOBITA」といった単語がポンポン出てきました。クールジャパンだなあ。
 驚いたのは「KIMINONAWA」を既に見たそうで(友だちから借りたそうですが、正規版のDVDも発売前でしたけど・・・)あれに登場する日本の宗教儀式(巫女が唾液でつくる「口噛み酒」とか)について激アツ!で質問されました。日本のお祭りで必ずやるんじゃなく、自分もあの映画で初めて知ったんだってば・・・と、自分の知識と英語力では満足な回答できず。。
 
 そんなこんなでお喋りしながら寺院に到着したら、そこには何故か白い2体の日本兵の像が!!!こんな辺鄙な場所に日本兵が祀られていることに衝撃を覚えて思わず声を上げました。終戦時に帰国せずインドネシア独立戦争に合流して命を捧げた日本兵がいたらしく、現地の有志(彼女のお父さんたち)が数年前に慰霊碑を建て直したそうです。
 
 
 自分が驚いて何度も声を上げるのを見て、彼女たちはとても嬉しそうでした。ますますフランクになり、慰霊塔の脇に立っているスターフルーツの木からジャンプして実をもぎ取り、袖で拭いてガリッと齧る彼女たち。ワイルドです。ひとつ差し出されたので自分も真似して齧ってみましたが、シブくてすぐに吐き出しました。
 
 
 その後、慰霊塔の隣にあったヒンドゥー教の祠でお参りの実践レッスン。地べたに座るように言われて、両隣に彼女たちが座ってレクチャーしてくれます。
 お香に火を点して地面に刺し、お供えの中から花びらを取り出して両耳と髪の毛の中に差し込んで(たまに街で耳に花びらを挟んでいる現地のムサいおっさんを見掛けますが、これだったのか!)合掌してマントラを唱えるように言われました。「オーム、シャンティ、シャンティ、シャンティ、オーム・・・」あっ、ヨガレッスンの時のと同じじゃん!?
 振りかけられた聖水を顔や腕にすり込んで、お香が漂う静寂の中で合掌してメディテーションです。目を閉じて3人で並んで静かにお祈りしていると、国も人種も宗派も関係なくなりますね。不思議な感覚でした。
 
 お祈りが終わって「とてもいい経験ができた」と礼を言うと、今回が彼女たちにとって初めての任務だったらしく、日本人にどんなプログラムを提供すれば歓んでもらえるかを考えて、この寺院を選んで連れてきたとのこと。とても満足していると伝えると、大喜びしていました。
 
 グリーンスクールに戻って、わんさかハエがたかっている大皿から好きな料理を取ってきて一緒にランチ。小柄な彼女たちの方が自分の倍くらい山盛りで取っていました。ダイエットなど全く気にしていない旺盛な食欲がまた気持ちが良い。
 
 他のスタッフから声を掛けられて、誇らしげに報告している様子は、見ていてこちらがハッピーな気分になりました。忘れかけていた?ピュアなサービス精神を彼女たちに教えてもらえた気がします。どうもありがとう。