Réalisation ॐ

永遠の相のもとに 〜 Sub specie aeternitatis 〜

 正直という信念

 ぼくが駆け出しのエンジニアだった頃に、社内で研究発表会がありました。

 その際、発表順を待っている間に、上司が発表資料の中身を勝手に差し替えてしまいました。
 まだ実用化の目処が立っていなかったものを、見込みが得られたようなニュアンスに表記を変えた、という些細な変更ではありました。
 前の発表者が幹部から指摘された内容を聞いた上司が、同じ指摘を避けたかったのだと思います。

 ぼく自身の準備は万全で、特に緊張もせず順番を待っていたのですが、発表後の質疑応答になって何故か「平常心」を失ってしまい、聞かれてもいないことを自分から説明してみたり、取り繕う意識が働いて非常に後味の悪さが残りました。
 準備の苦労を考えれば、本来は達成感が大きかったはずなのですが、自分の中には悔いが大きく残ってしまいました。


 その翌年、社内で幹部の面接を受ける機会がありましたが、周囲に「なるべく無難に」といった雰囲気があった中で、ふだん考えていることを率直に申し上げました。幸い、結果は良い方向に転がりましたが、結果がどうであろうと、その場ではありのままの自分を評価してもらおう、と清々しい気持ちで面接に臨んだ記憶があります。


 些細な経験でしたが、未だにプレゼンに臨む姿勢として、どういった状態が自分にとってはベストなのか、それを示してくれた出来事です。