Réalisation ॐ

永遠の相のもとに 〜 Sub specie aeternitatis 〜

組織を変革する3つのパラメータ

 これは画像検索で拾ったFe-C状態図。Y軸が温度、X軸が炭素含有量です。

http://www.sv.vt.edu/classes/MSE2094_NoteBook/96ClassProj/examples/kimcon.html

 このX−Y座標のZ軸として冷却曲線があり、それぞれのパラメータで鉄(炭素鋼、不純物の多いものは鋳鉄)の材質をコントロールできます。一般的に「鉄」と呼ばれますが、用途によって求められる材質は様々です。経験的に用途に最も適した「硬さ」や「粘っこさ(=引っ張り強さ)」を得るための熱処理が行われます。

 これは金属組織の世界での話なのですが、この「組織の性質を熱処理する」という『世界観』から得たノウハウの素晴らしさを、ぼくは人間組織のマネジメント(或いは個人のコーチング)の分野で思い知らされることになりました。

  1. 温度とは熱、すなわち「情熱」。
  2. 炭素(不純物)含有量は「組織の均一さ」。組織内におけるビジョンの浸透度や目標の共有度。
  3. 冷却曲線は「時間の掛け方」。

 こうして置き換えて考えると実に的を得ていて(もちろん金属の状態図のまんまじゃないですが)全体像というか、置かれている「状況」を評価する上で、個人にも組織にも当てはまるものなのです。構成員の状態を変化させ、強い組織に変革するために必要な条件も、この『世界観』からの応用で導き出せる気がします。

  1. 熱:事業やプロジェクトに取組む動機や姿勢。まずリーダーの情熱ありき。それが火種、熱源であり、組織の構成員に熱伝導していく。
  2. 不純物含有率:目指している方向が揃っているか、ブレているか。一定の情報提供をした上で、ビジョンを共有できない構成員の処遇の検討。但し、注意が必要なのは、純度の高さは組織の脆さにつながるということ。クラスター間の触媒になるべき人材まで排除してはならない。異端児?を適度に包含できる組織こそが危機に対する強靭さを保つ。
  3. 冷却曲線:頭から水を掛けるか、じんわり現実を訴えていくか、「焼きを入れる」タイミング。・・・これは組織の状態を見て注意深くアクションに移す重要な『勝負どころ』。ショックを与えて好転するゾーンと、それで組織をボロボロにしてしまうゾーンのどちらにいるのかを的確に見極めて、実行に移す必要がある。

 組織の変革に「成功法則」は存在しません。但し、理屈として考えれば分かる「やってはいけないこと」は極めて明確であり、そういった「組織変革のタブー」を避けることで、組織の変革を成功させる確率は確実に高めることができます。

 コーチングやプロジェクト・マネジメントのスキルも、実例やケーススタディーの積み上げで経験値を増やし、判断力を磨いていくものです。データのプロット数が増えれば、多次元のグラフが描けるようになるでしょう。
 人によって『世界観』は異なるでしょうが、頭の中でこういった多次元の「状態図」が描けていれば、ブレずに判断を下すことができます。一貫性のある指示が変革に伴うチーム内の不安感や不信感を払拭した時、組織の方向性はおのずと明確になり、均質な状態に近づいていくものです。
 結局のところ、自分の『世界観』の中では組織の変革とは「熱処理」であるため、リーダー層が熱を発しなければ「組織の変革は望めない」と思っています。