Réalisation ॐ

永遠の相のもとに 〜 Sub specie aeternitatis 〜

現場を見ること

 被災地はよく晴れていて、静かでした。
 時々、復旧作業の大型車が通り掛かる以外、周りからは鳥の声しか聞こえない、そんな静けさの中でラジオの音が流れていました。
 ぽつんと停めてあった軽自動車から流れるのは、研ナオコ「夏をあきらめて」。
 少し離れたところに、麦わら帽子を被って土いじりをしているお爺さんがいます。
 
 この土地とご老人の関係、元にあった家のこと、他にもいるであろう家族のこと・・・無意味と思える作業を続けるご老人の後ろ姿を見ながら、いろいろ想いを馳せたものの、声を掛けることはできませんでした。
 
 ぼくは震災時に日本を離れていたせいか、実感が薄いというか、津波のことも、原発のことも、どこか遠い世界で起きた出来事のように感じていました。
 そういった自分の感受性が、以前よりも衰えている気がしています。
 今回、現場に足を運んでみて、少し身近に考えられるようになりました。