空きっ腹で高速道路に乗るようになった。以前はサービスエリアで缶コーヒーを買うくらいだったが、今は買い食いが旅の楽しみになった。道路公団民営化の効果を目の当たりにする度に、質の転換やアイデアで経済効果を生み出す余地が日本にはまだまだあると感じる。そして、それは本来、日本人が得意とする分野であるはずだ。
朝生に出演していた猪瀬さんは格好良かった。主義主張を感情的に叫ぶ出演者が多かった中で、仏頂面で事実を淡々と述べながら周囲を黙らせる。発言の内容で議場の空気を変えることができる出演者は限られていたと思う。「突破する力」という硬派な精神論を書いた本があるが、人付き合いやら何やらよりも、やるべきことをやって結果を出す、そういった姿勢に強く共感させられた。
副知事となって地下鉄一元化の推進したり、情報ツールの活用が震災時に功を奏したあたりは、猪瀬さん独自の功績だと思う。多くの政治家とは明らかに違っていたし、理想を唱えるだけの批評家でもない。合理的に問題を解決できる実務家として、有言実行する姿勢を尊敬していた。
ただ、尖閣諸島の問題では言動が石原氏に媚びているように感じたし、オリンピック招致もコンセプトが猪瀬さんの文脈ではなく、舞い上がっているような違和感があった。・・・変節したと言ってしまえばそれまでだが、新たな立場に挑戦する意欲を持ったとしても不思議ではない。献金の問題は、貸してくれるというから借りた、それ以上でもそれ以下でもないだろう。「政治家としてシロートだった」と本人が言っている通り、判断基準を変えようと試みていた中で、適切な助言が得られなかったのだと思う。
その行為自体が非難されるのは理解できたが、傲慢だ何だと人格否定を繰り広げたマスコミには呆れた。コメントの内容は、既得権益を持つ政治家や役人、口先だけの文化人による嫉妬としか思えなかったが、これが世論に波及していく様子は極めて日本的な現象だと感じた。結局、あっさりと辞任したのは残念だったし、あれほど頻繁に発信していたTwitterが鳴りを潜めて、ご本人が何を考えているかずっと気に掛かっていた。
2014/11/29(土) @ゲンロン
猪瀬直樹×東浩紀『さようならと言ってなかった』
ご本人登場ということで五反田のゲンロンに足を運んだのだが、大幅に時間枠をオーバーして濃密な話を聞くことができた。前半は「歴史と文学と国のあり方」といった高尚な話、後半は「時代と自身の半生を重ねながらの光と影」といった感じだろうか。心に響くエピソード満載だった。
『イギリスの民主主義をそのまま真似たら政権交代の度に近隣諸国に滅ぼされるリスクがあると考えた伊藤博文は、国を官僚が支える制度にしたが、官僚が自己増殖して制度疲労を起こしている。本来の理念に基づいて制度を見直さなければならない』・・・作家としての構想力を発揮して、それを実現したかっただけで、どの党と組むかなどには全く興味がなかったとか。献金問題について誘導尋問?されても、自らの脇の甘さを反省するだけで他人への恨み言は一切なく、そこからも人柄が感じられた。
人にはそれぞれ「持ち場」があって、そこで頑張ることが世の中をつくっていく・・・といったメッセージを何度も繰り返していたが、それが現在の境地なのかもしれない。政治の世界でプレイヤーとして活動するのはもう懲り懲り、とも受け止められたが、個人的には残念でならない。民間登用について尋ねられ『自分のような人間が後に続くと思っていたが、いなかった』と寂しそうに答えた表情が印象的で、長い歴史の文脈の中で異端者として生きている覚悟がこの日のお話からも伝わってきた。
「志の違い」が周囲との温度差になってバッシングにつながったとしたら皮肉だが、それが現実社会の矛盾であり、そこを妥協した途端に足下をすくわれたように思えてならない。ここから自分は何を学べばいいのだろうか、ということを、ずっと考えている。
- 作者: 猪瀬直樹
- 出版社/メーカー: 青春出版社
- 発売日: 2011/02/02
- メディア: 新書
- 購入: 23人 クリック: 240回
- この商品を含むブログ (32件) を見る
- 作者: 猪瀬直樹
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2014/10/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (5件) を見る