Réalisation ॐ

永遠の相のもとに 〜 Sub specie aeternitatis 〜

西寧という都市

 翌日は、夕刻までに空港に行けば良かったので市内観光を。博物館にはチベット仏教シルクロード伝来の芸術品が多数展示されているらしく楽しみにしていたが、定休日で入れなかったのが不覚。初日の到着後に見に来れば良かった。
 
 市内を歩きながら感じたのは、歩いている人の半数あまりが少数民族ではないかというくらい見掛ける頻度が多いこと。チベット族チベット僧も頻繁に見掛けたが、イスラム系の回族に至っては、西安の回民街周辺と同じくらい当たり前のように歩いていた。この、他の都市では経験できない「多様な光景」を中国で目の当たりにできたのは貴重な収穫だった。
 
 中国でも大都市では外資系ファーストフードをよく見掛けるが、西寧ではケンタッキーフライドチキンは点在しているのにマクドナルドを全く見掛けなかった。他の都市ではどちらかというとマクドナルドの方が多いくらい。回族は宗教上の理由で、豚肉を一切使わない「清真料理」しか口にしないが、羊肉が主体であるものの牛肉ならば問題ないはず。マクドナルドが西寧で展開していない理由、調べると面白いかもしれない。
 
 繁華街のピザハットでランチを食べていたら、ガラス越しにのぞいていたチベット僧の3人組が入ってきた。大きな違和感があったが、その後、街を歩いているとケンタッキーやアップルストア、ケータイショップなど、あの出で立ちに似つかわしくない場所にいるチベット僧のグループをよく見掛けた。
 彼らも人間、特に若い僧侶が普通の若者と同じような興味や関心を抱くのは考えてみれば当たり前だが、部外者である我々は古き良きチベットのイメージであってほしいと願ってしまう。全てのチベット人が経済発展を望んでいないかのような思い込みは、問題の本質を歪めかねない。
 中国共産党のやり方は分かっていながらも「100%中央政府が悪」という観点からはチベットの真実は見えてこないだろう。拉萨に入境することは適わなかったが、ここ西寧におけるチベット僧の様子からもこの問題の複雑さを垣間見ることができた。
 
 繁華街から東関大清真寺という西寧市最大のモスクを見るために下町に向けて歩いてみたが、進めば進むほど回族の比率が増えて周辺一帯が大きな回民街になった。夕刻になってしまい中に入れなかったが、西安の大清真寺周辺とは雰囲気が大きく異なり、人通りが集中する繁華街がなく、観光地としての魅力や経済的な潤いが全く感じられなかった。
 裏通りの商店街などを歩いて、回族の日常生活を垣間見ながら異文化に触れる楽しみを味わったが、西安の回民街よりも「かなりワイルド」な光景から感じられたのは率直に言えば「貧困」だった。
 
 
(切断されたヤクの頭部や足先の毛をバーナーでひたすら焼く作業:謎)
 
 
(剥ぎ取ったままのたくさんの毛皮が無造作に出回っていた)
 
 
 
 
 
 この都市において回族は「少数民族」ではないために優遇政策の対象と見られていないのか、或いは前日に見たチベット寺院のような観光プロデュース能力に欠けるのか、いずれにしても寂しい印象だけが残った。

>西寧市内から空港までのシャトルバス乗り場