Réalisation ॐ

永遠の相のもとに 〜 Sub specie aeternitatis 〜

いい人はいいね、鎌倉はいいね。

 早川義夫ライブ
 〜あじさい〜Vol.14 いい人はいいね、鎌倉はいいね。
  鎌倉 歐林洞ギャラリーサロン(ワイン・紅茶・お菓子付、税込)

 こちらの会場での公演は定期的に開催されていたけれど、これまで縁がなかった。・・・というか、普段のライブハウスと違う気恥ずかしさを感じて見送ってきた。お菓子付、とか書いてあるし。。決して敷居が高かったわけではないんだけど、なんだろう、まだ早いような気がしていたのだ。
 いつも、ここ歐林洞でのライブは佐久間さんとのコンビで出演していたように思う。それが叶わなくなった現在、誰か別のパートナーと組むのではなく、ソロ公演。あえて、という表現を使うまでもなく、それは自然な選択肢に思えた。純粋に、その空間を見たいと思った。全体的に曲のテンポも早かったし、間を開けずに3〜4曲まとめて演奏するスタイルだったので、次々と繰り出される曲によって空間と詩の世界観が一体化してしまい、いつしか真っ白になって何も考えられなくなった。酒も呑んでいないのに、もうフラフラ。目を閉じてピアノの旋律に身を委ねていると、椅子から転げ落ちそうだった・・・。
 会場内の共鳴か、エコーが掛かったように少しずれて聞こえる音があったのだが、それが時にはあり得ないコーラスや他の楽器の伴奏のように聞こえた。自分の耳を疑いながらも、疑いたくないような、本当にそうだとしても何ら不思議ではないような、そんな空間だった。
 最近ホームページに日記を書かなくなったので近況は分からないが、心境の変化を察するに余りある演奏だった。以前はきっちりと音源通りに演奏していた曲を崩してみたり、間奏で即興的にメロディーを口ずさむなど、かなり自由に振る舞うようになった。それに、失礼ながらピアノがすごく上手くなった気がする。あまり装飾のないシンプルさが魅力で、それ故にどんな楽器の誰と組んでも成立していたと思うが、ソロの演奏家として高い完成度を求める方向に進化していた。そう、明らかに進化していた。
 以前の黒づくめにサングラスではなく、丸メガネの奥から細い目で会場を見る初老の男性像は、ますます世間一般で言うイケメンではないはずだけれど、うわっ格好いい・・・そう感じた。格好いいことはなんて格好悪いのだろう、とか言いながら、本人が格好いい年の重ね方をしているのは、まんまと騙された感じで癪に触る。
 前半10曲、後半10曲くらい演って、アンコールで出て来たら「下でお茶の用意をしていて、約束の時間まであと30分ある」とかでw そこから急にアットホームな雰囲気にお喋りしながら5曲くらい。満喫しました。

※お喋りの中で、ラジオで取り上げられたエピソードが紹介されましたが、こちらにまとめられていました。 
 夜のプレイリスト(長塚圭史)早川義夫「恥ずかしい僕の人生」
 改めて、タイトル曲「恥ずかしい僕の人生」の歌詞が重くて痛いくらいです。これまで、そんな風に感じたことなかったんだけどなあ。。

 何も見えないのは 伝えるものがないからで
 わざとらしく感じるのは かっこつけたいから