Réalisation ॐ

永遠の相のもとに 〜 Sub specie aeternitatis 〜

ケン・ウィルバーのインテグラル(統合)理論

 旧題:万物の理論、最近になって「ティール組織」が流行ったためか?改題して再翻訳されたようです。ケン・ウィルバーの思想には2002年頃に唯識トランスパーソナル心理学の文脈から少し触れたことがありますが、ゴール設定にスピリチュアルが入っている印象に抵抗を覚えました。当時はあまりに現実離れしていて役に立たないように感じた記憶があります。

 ぼくの問題意識は現在も、そういった理想の実現に伴う「現実的な障壁」にどう対処すれば良いかに向けられています。なので「ティール組織」の本もちゃんと読んでいないのですが、目次を見て言いたいことは分かったし、理想としては共感できます。

 ただ、ある事情から必要が生じて「インテグラル理論」を改めて読むことになりました。身近な人が突然スピリチュアルなことを言い出したのですが、それを否定せずに受け止めた上で変な方向に行かないように導かねば・・・と思った時、頭に浮かんだのがケン・ウィルバーの描いていた地図でした。 

masudam.com

 ここ数年来、ぼくもスレスレの領域(宗教と科学、認識論や政治哲学)を彷徨ったので、予備知識が身についていた効能か、彼の難解な思想を自分なりに解釈できました。やはりゴール設定は非現実的に思えましたが、この世界をどう捉えるか、異なる価値観とどう付き合っていくかを考える上で非常に参考になりました。

 前述のサイトに詳しいので内容の解説は割愛しますが、一般的によく言われる「文系と理系」と「個人の内面と社会」がXY軸の平面座標に展開されており、Z軸(平面座標に矢印で記載されていますが)の発達レベルがあらゆる格差の原因と考えると、分かりやすく社会問題の位置付けを定義できる気がします。(第一象限:人文学 第二象限:自然科学・生態学 第三象限:社会科学・宇宙物理学 第四象限社会学 大体こんなイメージでしょうか?)

 そういった意味では、自分自身が大切にしている価値観をポジションとして客観的に捉えて、それが他の価値観からどのように見えているか相対的に考えるのに役立つと思います。但し、そのような行為自体そもそも変態じみており?マイノリティーの証しとしか思えないのが残念な現実ではありますが・・・。

 自己研鑽によってグリーンの段階に達した(リベラルな)人々が、己の価値観を「正しい」と自負することで「他者に排他的、攻撃的になってしまう罠」に対する警告、その先の目標設定、それこそがこの「インテグラル(統合)理論」の大きなポイントだと思います。それは、過去の自分自身にも当てはまる傾向であり、ここ数年来の思索「リベラルはなぜ勝てないのか」にも通じているように感じました。

 全ての領域を個人が超人的に網羅するのは非現実的で、やはり役割分担が現実的だと思いますが、そのためにはチームの構成員で地図の全体像を共有しておく必要があります。PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系)でも最終的な肝は「統合マネジメント」であることから考えると、あながち「現実離れした理想論」でもないように思えてきます。機が熟したのか、必然だったのか、こちらの準備が整った頃に改めてケン・ウィルバーを読む機会に恵まれたのは幸いでした。