テクノロジーの進化そのものよりも、それによって人間や社会がどう変化していくのか、或いはその中で自分自身はどうすればより良く生きていけるか、という観点で「ウェブ進化論」を読ませて頂いたぼくにとって、この「ウェブ人間論」のアプローチは関心の本質を突くものでした。
芥川賞作家の出してくる引用はさすがに難解だと感じながらも、豊富な知識と普遍的な人間の習性を踏まえて投げ掛けられる言葉は、梅田さん自身が指摘しているように「違ったスパン」の視点から、より議論のテーマを立体的に確認させてもらえた気がします。
梅田 今してきたような議論というのは、シリコンバレーで新商品の開発の時に必ずやるんですよ。延々と哲学的な議論をして、売れる売れないの判断をする。徹底的に議論をしないと、未来を変えるような大きな商品って出来ないんです。アップルのスティーブ・ジョブズはそういうことの天才で、彼を中心にそんな哲学的な議論が続けられた中から、iPodが生まれたんです。P137
情報収集という「インプット」や情報伝達という「アウトプット」、その段階でインターネットが重宝するのは言うまでもないですが、情報をパズルのように組み立てる発想段階では、人間本来の持つ本質的な能力が試されるものだと思います。
パズルを組み立てるその瞬間に於いては、ネット接続の有無からはあまり大きな恩恵はなく、むしろ経験を超えた直観が求められるものだと考えてきました。
梅田 技術そのものが足りないとかそういう問題ではなく、技術に関する感性とプロデューサー能力を併せ持ったカリスマ的なイノベーターが出てくるかどうかが鍵を握ります。P138
新たなテクノロジーに対して革新的であればあるほど、人間としての普遍的な資質も要求される、こうして高くなる一方のハードルにどう対応していくのか。
全てがインスタントでバーチャルに済まされる現代社会の中で、それをどのように磨いていくのかが、今後は人材育成の上でも大きなポイントになるでしょう。
自分自身はこの半年間、むしろネットから離れる方向に生活がシフトしてしまい、当初はそれにストレスを感じていました。ただ、アナログツールを用いた閉じた系での考えごとが、より効果的なイメージトレーニングとなることを再確認させられました。
もちろん、その前後のプロセスに於いては、レスポンスの悪いネットワークにストレスを感じ続けていますが。とりあえずは自分自身をモルモットにしながら、そんな試行錯誤を続けているところです。